VHF/VLF帯電磁波の観測・観測手法の開発、電波観測による電離圏擾乱の検出

標準電波(40kHz)の位相変動による電離圏擾乱の検出

長波(周波数:30-300 kHz,波長:1-10 km)は主に下部電離層で反射します。下部電離層に地震による重力波や流星,太陽活動などによって擾乱が起こると,長波の反射高度が変化する為,伝搬経路の長さが変化します。本研究室では,福島県おおたかどや山から送信されている40kHzの標準電波を千葉大学西千葉キャンパスで受信し、位相変動を観測することでおおたかどや山と千葉大学間の電離層の振る舞いを観測しています。 特に、地震による電波の異常伝搬などについて注目していますが、異常伝搬の原因が大気擾乱によるものか電離層擾乱によるものかということはまだ詳しく分かっていません。そこで,大気による擾乱を受けない長波帯の電波を用いることで,異常伝搬の原因がどこにあるかという問題についても解決したいと考えています。 実際に観測に用いているアンテナを図1に示します。


図1:観測器の回路図と観測に用いるループアンテナ

標準電波の位相変動観測結果

 この観測システムを用いて観測した,標準電波の位相変動観測の観測結果(2008年5月4日)を図2に示します。この結果から日没時のD層の生成と消滅時の急激な位相の変動と受信電圧の位相の変化が見て取れます。伝搬路(おおたかどや山〜千葉大学)は比較的短距離でなので,D層で反射する昼間は位相、受信強度が共に安定しているのがわかります。以上の特性から,システムを使い標準電波を受信することで,電離層の振る舞いを観測することが可能であることが分かりました。今後は定常観測を行い,位相変化の日々変動についても観測を行う予定です。


図2:観測した標準電波と情報通信研究機構が観測した結果の比較

Tweek空電の到来位置推定法の開発

Tweek空電とは,雷放電によって放射された電磁波が,電離層・大地間を長距離にわたって導波管モードで伝搬したVLF帯の信号のことで、数10msecの間に周波数が急激に降下する非定常な信号です。

図3:沼田市で観測したtweek空電の例

雷の発生位置を推定することによって観測点までの伝搬路が特定でき、空電の遮断周波数から伝搬路の平均電離層高度を求める事もできます。また広域に渡って雷分布を特定することにより大規模な電離層擾乱も調べることができます。 この発生位置を調べるには,観測されたtweek空電の分散関係(時間ー周波数関係)を詳しく調べる必要があります。本来球面の曲率を考えたモデル(spherical earth model:図4参照)を使わないといけませんが,このモデルでは,mode方程式が6次となり,解が一意に特定できないため,これまでの研究では,地球表面を水平に考えた,flat earth model(図5参照)が使われてきました。
図4: Spherical Earth model 図5: Flat Earth model


これらのモデルによる分散関係の差は到達時間が早いほど(電波の周波数が高いほど)誤差が大きく,伝搬距離を6000 kmとしたときのモデル計算では,到来時間が21 msの時,5 kHzほどの差になってしまいます(図6参照)。この誤差は無視できないものであり,この差を解消することが不可避とされていました。 そこで,両者の差を出来るだけ解消するために,分散関係を求める式の中に,伝搬距離に応じた時間遅れを取り入れることを試みました(図7参照)。 現在どの周波数で時間差を決めるのがよいか,などより正確な伝搬距離を求めるための研究を進めています。
図6:flat earth modelとspherical earth modelの分散関係の差 図7:分散関係から求めた,周波数と伝搬時間の関係式

VHF帯電波観測による電離圏擾乱の検出

地殻変動に伴い、広い周波数帯において異常な電磁現象例が報告されています。 これらの異常電磁現象の原因として、地殻変動時、あるいは地震発生前後に震源域上空に発生する電離層擾乱、または大気圏擾乱などが挙げられます。それらの擾乱にて電波が反射、散乱することでFM放送電波の見通し距離外伝搬が可能になると考えられます。 ここで、電離層の擾乱とは、通常平衡状態を保っている電離層が何らかの原因で一時的に電子密度が非常に高くなる状態のことを指しています。この状態のときには通常突き抜けてしまう高い周波数の電波を反射してしまうため、電波の異常伝搬が生じます(図4参照)。


図4:VHF帯電波伝搬の概念図


この異常伝搬の原因を探るため、擾乱域より反射してくる電波を観測します。その電波の到来入射角・方位角を求めることで下部電離層擾乱域を同定し、地震と電離層擾乱との関係を調べることが本研究の目的です。 具体的な観測方法としては、FM放送局電波を複数のアンテナで受信し、受信信号の位相差から電波の入射角、方位角を求めます。また、2箇所に観測所を設けることで、擾乱域を同定することができます。 受信対象としているのは、仙台にある77.1MHzの放送局で、これは十分な送信電力を持っていること、また、見通し距離外であることから選定しました。

図5:VHF帯電波観測点


また,この観測では,5素子の八木アンテナを用いますが,そのビームパターンを求めることは観測を行う上で重要です。八木アンテナのそれぞれの素子はダイポールアンテナとして考えられます。ダイポールアンテナの放射電界は以下の様に求められます。

八木アンテナの放射パターンを計算するには,それぞれの素子同士の相互作用を調べないといけません。その相互作用を考慮した時のビームパターンは以下の式で表されます。


そして,これらの式を使って求めたビームパターンは以下の図の用になります。

図6:八木アンテナビームパターン