中田裕之

准教授 千葉大学大学院工学研究院(融合理工学府基幹工学電気電子工学コース)

研究

  • 地震,台風及び火山噴火に伴う電離圏変動の観測・解析
    地震に伴い電離圏に変動が現れることは従来知られていたが,2011年に発生した東北地方太平洋沖地震以降,全地球測位システム(Global Positioning System, 以下GPS)を利用した電離圏変動観測が注目されてきたことから,GPS電波が電離圏を通過する際の補正量から得られる電子数(GPS-TEC)データおよび短波(High Frequency, 以下HF)ドップラーデータを用いて,地震のみならず,台風・火山噴火などの自然災害に伴う電離圏変動の解析を進めている。GPS-TECデータを用いた解析では,変動量が津波高度に比例することを明らかにした。また,HFドップラーを用いた解析では,地表面から上空に伝わる音波の増幅率を観測結果から明らかにし,理論的に予想される変動と一致することを示した。さらに 超短波(VHF)による電波観測により,電波の到来方位が電離圏変動により変動することを明らかにした。
  • 電離圏中に発生するプラズマバブルの解析と電波伝搬に対する影響評価
     赤道域電離圏において,春秋の日没時に,プラズマバブルと呼ばれる,電子密度が局所的に減少する事象が発生する。この内部では電子密度分布に濃淡があり,広い帯域での電波を散乱させる。GPS-TECデータ並びに大気光可視光観測を用いて,プラズマバブル内部のどの領域においてGPSの電波捕捉ができなくなるかを明らかにした。近年,航空機のGPS航法が計画されており,本研究はその影響評価にもつながるものである。
  • 地球磁気圏のシミュレーション
    地球磁気圏に関する研究は,広い領域にわたって行うシミュレーションが非常に有用である。現在まで開発されてきたシミュレーションコードは,かなりの部分まで現実の地球磁気圏を再現していることが明らかにされてきているが,磁気圏と電離圏の結合部分に関しては,静的な電場のみを扱うモデルが使われていた。このシミュレーションで導出される極域電気ポテンシャル分布が観測とどのように相違しているのかを明らかにし,磁気流体波動により磁気圏と電離圏を結合する動的モデルを提唱した。これにより,磁気圏シミュレーションにおいて,電離圏まで含めた領域での数秒程度時間スケールの変動まで自己矛盾なく求めることが可能となった。
  • 磁気圏電離圏結合系における磁気流体波動の数値計算
     地上磁場観測でしばしば検出される数秒から数百秒の磁場変動は,地磁気脈動と呼ばれる。これは磁気圏中の磁気流体波動の固有振動であることが知られているが,その固有振動の地球側境界である電離圏との関係については,不明な点が多かった。磁気圏―電離圏結合系における磁気流体波動の数値計算を行い,地磁気脈動の周波数が大きいほど電離圏の影響を受けやすいことを明らかにした。